2013.04.29
Wild Bill 野蠻比爾
筋☆3 エンタメ度☆3 音楽☆3 画面☆3.5 感動度☆3.5 思考度☆3
時は2012年、場所はオリンピック開催前の陰鬱でいつも曇りがちなロンドンの住宅街。
主人公は8年の刑務所生活から解放されたチンビラ・ビル。
彼は家に帰るが、そこにいるはずの妻はビルとの間に生まれた二人の息子を尻目に、
他に男作って、駆け落ちしちまった。
15歳の長男ディーンと11歳の次男ジミーは、八年の隔たりのせいか、なかなかお父さんを信用してくれない。
ビルは、タイトルとは裏腹に全然ワイルドじゃない。笑。
二人息子の兄のディーンはわりとしっかり者で、両親不在の間、オリンピック会場建設現場へ出稼ぎして、
ずっと弟の面倒や教育を見てくれる。柳楽優弥が演じる「誰も知らない」の長男そっくりだ。
が、弟は町の不良たちに絡まれ、学校でも問題児扱いされる。
ビルはムショから出てきた途端足を洗うつもりでいたが、チンピラの組織は、なんと薬の売買をその意志薄弱な息子ジミーに任せる羽目に。
加えて長男は、組織との関与で父への不信感が募る一方である。
ビルは一人の父として勇敢に立ち向かい、これらの問題を次々解決していく。
印象的なのは、長男のガールフレンドが家に仲直りをしに来るところを、
ビルがジミーと組織の暴力を逃れて駆け込んできた女と一緒にチャイニーズレストランへ買い出し、
家に帰ってみんなで楽しく北京ダックを頬張るシーンだった。
とても微笑ましい。
こんな幸せな食事シーンは、かつて見たことないかも。
平凡でささやかな日常だが、それでも彼らにとって、精一杯に努力した末に引き換えた束の間の幸せなのだ。
最後ビルがパトカーに押し込まれて涙を流すシーンはちょっと泣けてくる。
日本ではよく「家族の絆」とか抽象的な言葉を見かける、それはマンネリ化したスローガンに過ぎず、
あんまり実感が沸かないけど、
この映画を見て、本当の父子愛を身を以て感じた。