2012.03.26
10+10
筋☆3 エンタメ度☆2 音楽☆2 画面☆4 感動度☆3 思考度☆3
中華民国100年10月10日の国慶に因んで、
いま活躍している20人の台湾人監督が送った10+10=20の珠玉のショートフィルム。
まずスローガンはとてもおしゃれで垢抜けた感じ。
このコンセプトと10+10をタテヨコにして二重の100を表現し、「100年」と「10月10日」をかけてるところがすばらしい。
毎作5分で合計100分の構成となるユニークな映画だが、
共同のテーマはあんまり見当たらないのがちょっと玉にキズだけど、無理矢理一つのテーマにこじつけないほうがいいかも。
台湾映画の「いま」を記録するという点でとても貴重な存在であり、盛大な「台湾映画まつり」と見ていいだろう。
以下、各編についての(独断と偏見に満ちた)格付けと感想を記しておく。
なお、タイトルも独自につけたもの。
後で本当のタイトルと監督名を付け加える。
【S級】(クラス内の順番は放映順による、以下同)
ご利益:
いきなり3Dメガネのくだりで吹いた!笑。台湾人の信心深さを物語る、心あたたまる小品だと思う。(謝神 The Ritual / 導演:王童)
セデックバレ、それから:
主役の普段の生活に密着取材。
字幕無しで原住民語はまったく分からないけど、カンヌ映画祭でスポットライトに浴びせられたスターのリアルな生活感が見れていいと思う。(登場 Debut / 導演:魏德聖)
老人探し:
慈しみのあるお年寄りの男性が自分の失踪で村の住人が総動員して彼を探した顛末をカメラに向かって語りかける。
照れるおじいさんの笑顔が可愛くて、ほのぼのな感じなんだけど、
最後のテロップを見て、え?え?たった今話してるこの主役のおじいちゃんはもしかしって…?
びっくり仰天!!!僕の誤読じゃないよね?
でも怖さが感じられず、老人の感謝の気持ちが伝わってきて、とても良かったと思う。(老人與我 Old Man & Me / 導演:鄭文堂)
歌う中学生:
とにかくキャスティングが秀逸。やんちゃな男の子と頭のいい優等生な女の子なのは顔を見てすぐ分かる。
おっさんのノスタルジーを誘うわ!笑(唱歌男孩 The Singing Boy / 導演:楊雅喆)
金の指輪:
巨匠の映画はやっぱり格が違う。
お年寄りの女性と若い女の子が先祖代々伝わった金の飾りを手に取り、いろんな思い出が自然とよみがえってくる。
大河の一滴のように、歴史の雄大な流れを淡々と、さり気なく語るところが奥ゆかしくて素晴らしい。
名実共に圧巻の一篇である。
ちなみにロケは銅鑼の旧医院と勝興の駅で行った。今度行ってみたい。(黃金之弦 La Belle Epoque / 導演:侯孝賢)
【A級】
雑貨屋のおばぁさん:
王道のジェネレーションギャップのネタ。
文字化したら国語教科書に載せても問題ないレベル。
でも、カメラワークがまるで昼ドラのように日常的に撮りすぎて、映画としての工夫が見当たらないし、
肝心な雑貨屋の看板などの小道具がちょっと安っぽいのが残念。(有家小店叫永久 A Grocery Called Forever / 導演:吳念真 )
初舞台:
サドンフィクションの特性を最大限に生かしたショートフィルム。
テレサ・テン物語の長編映画の一節になりそう。(初登場 The Debut / 導演:陳國富)
1949金門戦争:
戦闘シーンで敵か味方かはわからんけど、撮影はけっこう苦労したからA級にしちゃおう。
たった5分の映画も全力疾走という姿勢には評価する。(1949穿過黑暗的火花 Sparkles / 導演:張作驥)
100歳の一日:
100歳のおじいさんが自宅から山道を辿って遠くまで手紙を出す。
筋がまったくないが、なんか物静かでのどかな感じがいい。この映画の箸休めみたいな存在。(100 / 導演:何蔚庭)
緑島セレナーデ:
スタジオという内空間と公園の放送塔という外空間が逆タイムスリップになってて、いいと思う。
公園の夜とスタジオの暗がりが相まって、二つの映像から60年以上の歳月がたっても唄われ続ける歌の芳醇な奥ゆかしさが感じられる。(小夜曲 Green Island Serenade / 導演:侯季然)
イジメの順番:
便所の天井の滴りがとても印象的。これで一点張りって感じ。
あと、いじめられっ子の家族がいじめっ子の家に押しこむシーンも圧迫感があってすごい。
映像が途切れるところに鬼気迫った感覚が的確に表現される。(回音 Reverberation / 導演:鍾孟宏)
【B級】
バス停:
事件が起こりそうな不吉な静けさ。
次に何が起きるかも、というヒッチコック作品さながらの独特なムードでスリルな雰囲気を演出。
そのつもりだが、亜流の世にも奇妙な物語に見えちゃう。(到站停車 Bus Odyssey / 導演:沈可尚)
海馬体:
これも世にも奇妙な物語っぽい。でも店の置物など古めかしくていいと思う。(海馬洗頭 Hippocamp Hair Salon / 導演:陳玉勳)
神々の黄昏:
死刑囚にまつわる話。無駄にカッコつけてるな。
語り方がとてつもなく中二病。高校出版部の「○○青年」といった校刊にこういうの出そうな感じ。
ちなみに今まで一番よかったと思う死刑囚をテーマにした映画は『真幸くあらば』である。(諸神的黃昏 The Dusk of the Gods / 導演:張艾嘉)
国旗おろし:
文化人気取りの学生さんの卒業展程度のやつ。
監督の若さ故に荷物が少なく、ズバズバモノを言う社会批判がストレートで痛快なもんで、ネットじゃ好評が多そうだが、何だか少し生ぬるい。(潛規則 Unwritten Rules / 導演:鄭有傑)
プチセレブの桂ちゃん:
この世の人間と次元が違う、透明感のある美人だなぁと何度見ても思う。
売れて欲しいけど、マスコミへの露出が多くなると愛嬌が薄れるからちょっと矛盾。
ちなみに彼女は僕と同じ山羊座です。山羊座の美女はこういう物憂げな美人がデフォかもね。
人を待ってるかのように自宅の高級マンションのロビーに佇んでは、誰もいない部屋の中でバレーを踊る。
塗った口紅を拭いて、誰かに魅せつけるように一人で笑う練習をする。
底辺の人間じゃ味わえない有閑階級のささやかな憂鬱が見える。
けど一つだけ致命的なのは、作品を通して何を言いたいかわからん。
分からないからB級にしちゃったさ。すべてはボーイフレンドの監督が悪いなw(KEY / 導演:戴立忍)
パッド入りドレス:
閉店間際にも関わらず入ってくるKYな客と、きわめて無愛想だけど実はツンデレな店員、まるで漫才コンビのようなやり取り。
おもしろいけど、オチを意識しすぎて、ショートフィルムじゃなくてただのコントになってしまったよね。(有一好沒二好 Something’s Gotta Give / 導演:蕭雅全)
【論外】
デブスのチラリ:
デブスにもストーカーがいて、それに山奥の宿泊先まで付き纏った話。
結局一体何が言いたいのって全くわけがわからん。ただのナンセンスな悪ふざけじゃね?(釋放 Destined Eruption / 導演:王小棣)
ヴォリャァァァ%$#^@^&~:
昔の作品の二番煎じである上、障害者のステレオタイプに安易に嵌まり、
不気味な演出による障害者への露骨な差別は今どきヤヴァイと思う。
あと巻末のテロップもなんか「う~ん…」って感じ。
テロップの文章内容は正論だが、言葉遣い、レイアウトとフォントなどすべて時代遅れの匂いがぶんぶんしててダサい。
社会派ぶった勘違いな痛いやつにしか見えない。(無國籍公民 The Orphans / 導演:朱延平)
新婚さんの引越し:
どえらい近所迷惑だし、男が頼りなさ過ぎて見るだけで腹立つ。
結末のアペックの笑いって何?あんたらの為に苦労した人を上から目線でバカにしてん?(256巷14號5樓之1 LANE 256 / 導演:陳駿霖 )
以上、僕なりの番付でした。若干辛口批評になってるけど、あくまでも一個人としての意見です。
ネットで他の方々の『10+10』の番付を拾い読みすると、もっとおもしろいよ!