2012.03.11
The Descendants (中題:繼承人生)
筋☆4 エンタメ度☆3.5 音楽☆4 画面☆3.5 感動度☆4.5 思考度☆4.5
浮気は、文学やドラマ、映画などいろんなジャンルにわたり永遠のテーマである。普通の人生を一気に狂わす力をもっている、恐ろしい誘惑だ。
この作品も然り。
大人の事情をわかる年になると、こういうの弱いんだ。
感動と言うより、家庭事情のもつれに苦しむ人々の姿に、自然にウルウルしてしまうんだ。涙の自動装置って感じ。
主人公は世代ハワイに暮らしてきた白人の土地成金で、妻と二人の娘に恵まれている。
誰から見てもリア充過ぎた設定である。
だが、出だしに妻が事故って植物人間になり寝たきりになってしまい、
看病や反抗期の娘の教育と世話を追い詰められる主人公は、天国から地獄へ落ちてしまう。妻の生前の意思により、
生命補助器を取り除き尊厳死にすることを決め、主人公はこの件を家族全員に伝えようとする。
よりによってそんな中、妻が事故以前不倫してたことも発覚、もう泣きっ面に蜂状態。
本島からカウアイ島まで妻の浮気相手を追跡するが、その相手の男も家族持ちだ。
浮気男に自分の妻がもうじき死ぬって伝えた後、カウアイ島をあとにする。
もともと短気で頼りない主人公だが、この一連の混乱を自ら片付いていくところは、何だか悲劇の英雄じみでカッコいいと思う。
世渡りは決して甘くないことを知らしめる作品だ。
全編にわたりハワイの音楽を多用し、リゾートの長閑な雰囲気を醸し出しながら、
天国にも日常の時間が流れているんだという風に描いている。
主人公がハナレイ湾で浮気男を探すくだりで、村上春樹の「ハナレイ・ベイ」を思い出す。
ハナレイベイで事故で亡くなった息子と対面をしに来た日本人の母親の話。痛み悲しみを必死にこらえながら生きていく姿が、
どことなくこの映画のお父さんと重なる。
人生って思う通りにならないことが多いから、むしろその挫折、欠陥を上手にかわし、
あるいは直面しながら健気に歩いて行くしかないんだ。
ハナレイベイの砂浜の美しい夕日も、人生の機微が潜んでいるんだと、我は思う。
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